聖水洞は、いまも一強のまま沈んでいる
ソウルで「いま行くべき街」として名前が挙がるエリアを、2年ぶん同じ物差しで測った。聖水洞は2位の4倍近い差をつけて一強のままだ。ただし本人の検索量は、2年で45%減っている。

ソウルのどこが「いま」なのかは、この5年で何度も入れ替わってきた。カロスキル、延南洞、乙支路、漢南洞、そして聖水洞。日本語の紹介記事では、たいていこの順に主役が移ってきたことになっている。
実際に検索されている量を2年ぶん、同じ物差しで測った。結果は「入れ替わっていない」だった。聖水洞は2年前も今も、2位の4倍近い差をつけた一強である。ただし、その聖水洞自身の検索量が45%減っている。
そもそも聖水洞とは何だったのか
ソウルの東側、漢江の北岸にある区域で、もとは製靴と印刷、鉄工所の街だった。1960年代から70年代にかけて工場が集まり、90年代以降は空き工場が増えていった。赤レンガの建物と広い天井が残されたのはそのためで、いまカフェやショールームに使われている建物の多くは、もとの工場の骨格をそのまま使っている。
2010年代半ばから、家賃の安さと天井の高さを理由に、工房やギャラリーが入りはじめた。そこにブランドのポップアップストアが続いた。倉庫の広さは、期間限定の展示をやるのにちょうどよかった。SM エンターテインメントやムシンサといった企業の拠点が移ってきたのは、そのあとの段階である。
つまり、工場が抜けた跡地に、順に別のものが入った街だ。「再開発でつくられた街」ではなく「使われ方が置き換わった街」であり、赤レンガが残っているのは保存の結果ではなく、壊す理由がなかった結果である。
検索量で見ると、序列は動いていない
聖水洞が9.8で、2位グループが2.5から2.7。3.6倍の開きがある。そしてこの倍率は2年前とほとんど同じだ。2024年9月は聖水洞17.9に対して延南洞5.0で、やはり3.6倍だった。
順位も2年間ひとつも入れ替わっていない。「次に来る街」としてよく名前の挙がる乙支路も、2年前の4.1から2.7へ下がっている。追い上げてはいない。
ただし、全員が沈んでいる
序列がそのままで、水位だけが下がっている。ひとつの街が別の街に食われたのではなく、「エリア名で検索する」という行為そのものが縮んでいる。
これは街に限った話ではない。当サイトが追っている59語のうち47語が前年より減っていて、増えていたのはほぼ店やアプリの名前だけだった。地名は「モノや場所の名前」の側にあり、その側が全体として減っている。
検索が減ることと、人が減ることは別である
ここは慎重に書く必要がある。検索量は「その言葉が打ち込まれた回数」であって、街を歩いた人数ではない。行き先がすでに知られていれば、調べる必要はなくなる。
実際、同じ2年でダイソーの検索は22%増えている。買い場の名前は増え、地名と品目名が減った。人が出かけなくなったというより、出かける前に地名を調べる段階が減った、と読むほうが数字の形には合う。地図アプリを開けば済むことを、検索窓には打たない。
動画では、街ではなく、そこで起きたことが見られている
検索の外側でも確かめておく。同じ週に、9つの入り口からYouTubeの新しい動画を集めた。「성수동」から返ってきたのは3本、合わせて13.3万回である。
성수동에서 생애 첫 명품 쇼핑 후 달라진 이경규의 패션 감각은?(聖水洞で人生初のブランド買いをして、イ・ギョンギュのファッション感覚はどう変わったか)
YouTube「성수동」から。直近7日で6.7万回
上位2本は、どちらも街そのものの紹介ではない。1本はタレントがこの街で買い物をする番組。もう1本は、化粧品ブランドがこの街で開いたフォトコールに女優が現れた映像で、5.8万回。3本目でようやく街の話になるが、それは手製靴の工房で7,812回だった。
ブログでは、街が催事の会場として出てくる
同じ週に、ブログの新しい投稿タイトルからも語を拾っている。前回の集計に無かった語だけを残す数え方で、「성수동」の周りに出てきたのはこの並びだった。
- 판로(販路)
- 중소 / 중소기업(中小・中小企業)
- 제조사(メーカー)
- 온리페스타 / 나가노마켓(催事の名前)
カフェでもギャラリーでもない。中小メーカーが売り先を探すための催事という文脈で、街の名前が出てきている。もともと工場が抜けた跡に別のものが入ってきた街だが、いま入ってきているのは「売る場所を探している人」である。
検索が半分になっても、この街で何かが行われる回数が減った形跡はない。減っているのは「성수동」と打って調べる回数のほうだ。行き先から会場へ、街の役割が寄っている——ただしこれは1週間ぶんの観測なので、そう言い切るにはまだ足りない。
聖水洞について言えば、45%減っても2位に3.6倍の差をつけている。この位置は、少なくともこの2年では誰にも脅かされていない。
街の名前と、店の名前を並べてみる
残っている問いは、この沈み方が街への関心の低下なのか、調べ方の変化なのかという点である。エリア名の検索と、そのエリアにある店の名前の検索を並べれば、切り分けられる。店名のほうが保たれているなら、減ったのは関心ではなく調べる手順ということになる。
聖水洞にある店をいくつか選んで、同じ物差しで追いはじめる。次にこの街を書くときは、その2本の線を並べる。
編集部から。聖水洞に行くなら、いま行くのはむしろ好条件かもしれない。検索が2年前の半分ということは、同じ場所に向かって調べている人もそれだけ少ないということで、実際、平日の昼に並ばずに入れる店は増えている。
そして街の性格上、目的地をひとつ決めて行く必要はない。もとが工場街なので、通りに面した入口が小さく、中に入ると天井が高い建物が多い。歩いて外から中が見えないぶん、扉を開けるまで何の店か分からない。そういう歩き方ができる街は、ソウルでもそう多くない。
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