「ガラス肌」に次は来なかった。消えたのは悩みのほうだった
ツヤ肌の次はマットだ、ベルベットだと何度も言われてきた。2年ぶん測ったところ、ベルベットは730日のうち4日しか数字が出てこなかった。代わりに半分以下になっていたのは、毛穴・トーンアップ・肌のキメ——肌を直すための言葉だった。

「ガラス肌(유리 피부)」は、10年近く韓国コスメの代名詞だった。濡れているように見えるツヤ、光を返す表面。日本語の紹介でも、韓国のスキンケアといえばまずこれが出てくる。
そして「次はマットだ」「ベルベット肌が来る」という話も、ここ数年くり返し書かれてきた。本当に入れ替わっているのかを、2年ぶんの検索量で確かめた。結論から言うと、入れ替わっていない。ツヤは減っておらず、ベルベットは数字として現れてすらいない。
ベルベットは、730日のうち4日しか現れなかった
先に、データの読み方をひとつ断っておく。検索トレンドは、検索量が一定に満たない日については数字そのものを返さない。ゼロと表示されるのではなく、その日が欠けた状態で返ってくる。だから「数字が出てこない」は「誰も検索していない」ではなく「報告の下限に届いていない」という意味になる。
「벨벳(ベルベット)」は、この2年の730日のうち、数字が返ってきたのが4日しかなかった。2025年10月に1日、11月に3日。それ以外の726日は下限未満である。日本語でも韓国語でも記事にはなっているのに、その言葉で検索する人が、集計に載る量に達していない。
これは以前、砕いて食べるデザートを追ったときにも起きたことと同じ形をしている。あのときも「뿌셔먹는」という説明のための言葉が2年間0で、実際に検索されていたのは「왁뿌」というひとつの俗称だけだった。紹介する側が説明のために足した言葉は、現地では使われないまま残る。
ツヤのほうは、減っていない
では「ガラス肌」の側が落ちているかというと、こちらも違った。
グロウは9.6から10.4へ、わずかに増えている。周囲の語がそろって減るなかで、ここだけが動いていない。「次に取って代わられる」どころか、この2年でいちばん安定した語だった。
減ったのは、質感ではなく悩みだった
落ち方に並べてみると、性格がはっきり分かれる。減った3語——毛穴58%減、トーンアップ43%減、肌のキメ33%減——には共通点がある。どれも肌の状態を直すための言葉である。
- 모공(毛穴)は、目立たなくしたいもの
- 톤업(トーンアップ)は、明るくしたいもの
- 피부결(肌のキメ)は、整えたいもの
いずれも「いまの肌に問題がある」という前提から始まっている。そしてその前提は、誰かに見られることとつながっている。
グロウはそこが違う。直すのではなく、そう見せたい状態の名前だ。前提に問題がない。
同じ傾向は、化粧品の外側でも出ている。ダイソーの棚では、この夏はじめてネイルがコスメを追い抜いた。爪は自分が一日中見ている場所で、顔は他人にだけ見える場所である。人に会う機会が減ったとき、他人に向けた手入れから先に削られる——毛穴とトーンアップの落ち方は、その順番と一致している。
「次のトレンド」はどこから来るのか
ベルベットの例は、質感の流行がどう作られるかを示している。新しい質感の名前は、たいてい売り場より先に記事に出る。ブランドが新しいラインを出し、それを説明するために名前が必要になり、記事がその名前を使う。消費者がその言葉を使いはじめるのは、そのあとだ——使いはじめれば、の話である。
今週いちばん見られた化粧品の動画は、値段の話だった
検索の外側も見ておく。同じ週に、9つの入り口からYouTubeの新しい動画を集めた。「화장품 신상(コスメの新商品)」から返ってきた2本は、どちらもダイソーの新商品レビューで、上位は34.2万回。この週に集めた25本のなかで最も見られた動画だった。
内容は、88点の新商品を値段で並べていくものである。質感の話ではない。同じ週にブログの新しい投稿タイトルから拾った新顔の語は40語あったが、そのなかに肌の質感を指す語はひとつも無かった。出てきたのは販路、製造、催事名、食べもののほうだった。
質感の名前が次に移らないのは、その名前を運ぶ側——レビューや紹介の話題そのもの——が、質感から値段に移っているからかもしれない。これは1週間ぶんの観測なので、まだ仮説ですらない。ただ、「次の質感」を探すより、「いくらの棚で何が起きているか」を見るほうが、いまは当たりが多い。
「次はベルベット」と読んだとき、確かめるべきなのは、その言葉が現地で検索されているかどうかである。されていなければ、それはまだ言葉であって流行ではない。
言葉が消えたのか、商品ごと消えたのか
いま追っているのは質感と悩みの5語だけで、実際に売れている製品の側は見ていない。オリーブヤングの棚で何が動いているかを並べれば、グロウが保たれているのは言葉だけなのか、商品の中身もそうなのかが分かる。
「毛穴」や「トーンアップ」を名前に持つ製品が実際に減っているのかも、同じ方法で確かめられる。言葉が消えたのか、商品ごと消えたのか。次にこの話を書くときの本題はそこになる。
編集部から。韓国でスキンケアを選ぶなら、「次に来る質感」を探す必要はあまりない。この2年で分かったのは、ツヤの位置が動いていないということだった。
むしろ変わっているのは、悩みを名指しする製品のほうである。毛穴やトーンアップを前面に出した棚は縮んでいて、その帯の商品は日本に入ってくるころには韓国で残っていないことがある。旅先で買うなら、直すための一本より、質感そのものを名前にしている一本のほうが、数年後にも同じものが手に入る確率は高い。
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